腎不全で逝った愛猫のこと

最終更新日

すでに2匹の愛猫を腎不全で見送った。
1992年生まれで19歳と5ケ月で力尽きたチョビ。
これは、お葬式のとき、棺に入れた写真の一部。
初めて自分で飼った猫だから、溺愛していた。美人でちっさくて、いつまでも子猫のように愛らしかったけれど、14歳ぐらいから血液検査でBUNやCREAが基準値を徐々に超えはじめたのに、不勉強な腎不全ビギナーな飼い主は適切な対策を取らず、最後はそれはそれは悲惨なことになってしまった。

貧血については それが腎不全によるものという認識が飼い主になかったために長らく対策も取れなかった。以前の主治医は腎不全の進行で起こる事とやるべきことについてあまりちゃんとレクチャーしてくれなかったのだ。

左は死ぬ数日前のチョビ。
貧血が酷く(後述)、骨と皮で頭をなでると尖った骨が直接触れるかのようにゴツゴツしてきていたね。脱水していて補液に毎日のように通ったけれど、正直言ってここまで腎不全が進行するとそれも効果がないどころか、血が薄まって貧血が酷くなると言われて泣く泣く家で世話をした。 
死ぬ2日前の晩に突然10ccぐらい口内出血があり、動転した私は藁にも縋る思いで夜間診療の病院に連れて行ったのだ。
新しい血が全く作れない1.9kgまでやせ細った骨と皮の小さな身体にとっては十分に大量の出血だ。
その晩は少し落ち着いてほっとしたのもつかの間、翌日の晩に再び口内出血。
万事休すだった。泣きじゃくりながら病院に電話したけれど受話器の向こうの医師は「もうどうしようもない」という。
気が狂いそうだった。
チョビの血、大事なチョビの血!
輸血し続ける以外、血を得る方法もなく、もうどうしようもなかった。
そして翌日がお別れの日となった。

2011年12月17日。お別れの日。
その日は朝から強制給餌も受け付けず、生気を失った虚ろな目だった。
どこも見ていないような目。あの目は忘れない。
あれが生き物が死ぬ時の目なんだと思う。
その日は事もあろうにシューベルトの弦楽五重奏の練習日で自宅にメンバーが集まっていた。
月に1度5人の日程を合わせるのは至難のことで貴重な練習日だから、キャンセルはしづらかった。
腰の悪い夫がずっとチョビを抱いて座っていた。
私は気が気でなかった。
夕方になって強制給餌を試みたけどすぐに全部吐いてしまった。
もう水も飲まないし何も口に入れない。
彼女の消化器官はもはや水一滴も処理できないほと死んでいたのだ。
抱かれている姿勢すらしんどかったらしく、私たちのベッドに寝かせたが、身体を丸めることももう出来ない。苦しそうに小さくあえぎ身体を伸ばし、やってくる辛い瞬間をただ待つ私たち。
そして日付が変わる少し前、苦しそうだったチョビが痙攣し、声にならないような小さな叫び声をあげ、じきに動かなくなった。呼吸が止まった。そして心臓も止まった。
死んでしまった。
愛しいチョビがとうとう死んでしまった。
あと半年がんばれば20歳。何の根拠もなくチョビは20歳まで生きるんだと信じていたのに。

近所の延命地蔵尊がペット供養をしていることは知っていた。 合葬で他の子と混じってしまうのが嫌だった。 チョビの骨も遺灰の一粒も失いたくなかった。
庭中の花を摘んで棺に詰めた。
思い出の写真をたくさん入れた。
小さな小さな骨壺になって戻ってきた。
私は3日3晩ぐらい骨壺を抱いて泣いていた気がする。
そしたら4日後に2匹目のピート(享年17歳)まで逝ってしまったのだ…
同じく腎不全だ。もう涙も枯れて葬儀屋さんも絶句していたっけ・・・



【腎臓の機能が損なわれると起こる事】
これを知るにはまず腎臓の役割や機能を知らないといけない。
たいていの人が認識しているレベルのこと→
 「腎臓はろ過装置である。老廃物をろ過して尿として排出させる」
腎臓は糸球体という組織によって血液中の老廃物をろ過する。腎不全というのはこの組織が壊れてゆくことだ。
BUNやCREAが変動を始めたときはすでに7割壊れている→
これは知っていた。でもそれが取り返したがつかぬことである認識が甘かった。
一度損なわれた組織は二度と復活しない。失われる一方→
 これが私が最初、正しく認識していなかった重要なことだった。病気→治る、という図式には当てはまらないのだ。肝臓などは組織が再生したりするらしいが腎臓は一方通行。壊れないようにするしかなく壊れたらそれきりなのだ。
腎不全は貧血を起こす→
これを全く認識していなかった。チョビはだいぶ前から赤血球が減少=貧血があると血液検査で出ていたのに腎不全の進行と結びつけていなかった。

【貧血になると何が恐ろしいか】
ここを理解しておかなくてはならない。
「貧血」と聞いてもそんなに致命的な事と思わない人も多いと思う。
血液が足りないと何が起こるか?
すべての臓器も皮膚も血液によって稼働に必要な養分や酸素を受け取っている。これが届かないとどうなるか?  「組織の死」である。
十分な血液がなくなると、身体は生命維持のために致命的となる臓器から優先的に血液を送るようになる。心臓、肺、それから消化器の順だ。皮膚や粘膜などは優先順位が下がる。チョビの口内出血は粘膜への血液が届かなくなった結果起こったものだったのだ。肺や心臓そのものの機能には問題がなくても、血液が来ないことによって殺されてゆくのが腎不全末期の多臓器不全だろう。
なんて恐ろしく苦しそうな事だろう! 
健康な心臓を持っていてもそれが殺されてゆくしかないのである。

私が腎不全の恐ろしさを一番思い知ったのはこの事実を知った時だった。

では私たち飼い主はどのようにするべきか。それを次の記事でまとめてゆこうと思う。