枇杷の実
ひとつになろう ひとつになろう

と どんなにそれを願っても

ひとつになれない 淋しい種子が

思いあまって きつく抱きあい

互いに同じ夢を見た

その夢が果肉の部分

ひとよ

ひとよ

だからもう 薄い果肉と

なじるのは止せ

その夢の味 たたえたあとは

その種子をまた 寄せて埋めよう

 

高野喜久雄

詩集 <二重の行為>所収

「現代詩文庫」思潮社