「探さないで…………
 神に向かっての 発芽です」

二日も遅れて
ぼくにとどいた君のハガキだ
駆けつけてみると
どこまでも深く 澄み切っている藍色の湖水

手を入れると 突然
手は手首から離れて
ゆらゆらと泳ぎ出した
まだあがらない君の屍体の方に向かって

 

高野喜久雄

未完詩集より

「現代詩文庫」思潮社

魚 の イメージ。