またたびAngels 子育て日記

Prologue

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その日はとても良い天気でした。

昼下がりに裏山の遊歩道を友人とお散歩していたところ、
おばさんたちがなにやら騒いでいます。
「猫」などと口にしています。

そばに行ってみると、遊歩道脇の植え込みの中を
まだ生まれたての子猫がキーキーいいながら這いずり回っています。

「かわいそうに。 まだ他にも2匹いるのよ!」

でも、おばさんは可哀想というばかりで、子猫を助けてあげません。
このままでは烏の餌食か、冷えてきての衰弱死。
とにかく3匹捕まえて来たのですが、ハツカネズミのようなサイズ。
全員、長いへその緒をひきずり、1匹などはへその緒の先に乾いた胎盤らしきものをぶらさげています。
生まれて すぐに人間に捨てられたに違いありません。

ひどいことをする!…

生ませるなら きちんと里親探しするべきだし
捨てるぐらいなら生まれる前に獣医で堕胎するべき。
そもそも不妊手術を施す義務がある。

子猫もかわいそうなのはもちろんだが、
いきなり赤ちゃんを奪われた母猫も気が狂わんばかりだったに違いない。
今頃、お乳が張って つらいことだろう。


再度 おばさんたちに保護をお願いしたが、皆 腰が引けている。
「うちには1匹いるから」と言い訳する人も。

てやんでい! 猫ならうちだって3匹もいるやい!

そんなこと、理由になるかいっ!!

溜息をつきながら、それでも見捨てるわけにもいかず、
とにかく家に連れて帰ることにした。
散歩は中止。

手が濡れた。
掌がお尻に触れた刺激で おしっこが出たのだろう。
赤ちゃん猫というのは、母猫が舐めて刺激してやらない限り、
排泄も自力で出来ない生き物なのである。

旅行用の大きめのペットキャリーを出してきて、
ムートンのクッションやタオルを敷き、
ちび達を入れる。
そうして、私は隣のホームセンターにミルクを買いに走った。
猫用の粉ミルクと、哺乳瓶を手に入れ、舞い戻る。

しかし、ミルクを飲んでくれない。
そりゃそうだろう。母猫の乳首とはえらい違いだ。
皆、「いやいや」をする。

だけど、とにかく少しでも飲ませないと弱ってしまう。
四苦八苦して、雀の涙ほど 摂取させることに成功。
なにしろ、筆やスポイトを買ってきて、
子猫が乳首を探して手や指に吸い付こうとするたびに
その場所にミルクを塗りつけて舐めさせるのである。
たいへんだ。

だけど とにかく覚えさせなきゃ。

試行錯誤の上、乳首の穴を少し広げてあまり吸わないでも出るようにして、
無理矢理 口にくわえさせたところ、
キーキー騒いでいたのがピタっと止まり、
次の瞬間、んく、んく、と必死で飲み始めた!

やった!

こうやって、3匹とも授乳に成功。

人間の赤ちゃん同様、猫の赤ん坊も3時間ごとぐらいにミルクである。

今日からNagとかわりばんこで子猫のミルクの世話をすることにした。
最初はNag.
居間で子猫と一緒に寝るのである。

こうやって 一日目はなんとか過ぎた。

上から、「オレンジ」「チン子」「クロ」

名前は、週間「モーニング」連載の漫画「クロ号」からつけた。

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